「王、見えてきました」

 その声に、王と呼ばれた少年はゆっくりと目を開く。

 開かれた瞳は、海と対比する燃えるような深紅だ。

 「あそこでございます」

 傍らに立つ男が指差す方向には広い海の中、ほんの小さく盛り上がっているものがある。
 少年はあくびをしながら起き上がり、それをじっと見詰めると、口の端を持ち上げた。

 めずらしいこともあるものだ、とそれを見た男は軽く目を開く。

 「どうされました?」

 少年はああ、と男を見た後再び海に視線を戻す。

 「何でもない」

 ただ・・・と少年は続ける。

 「予感がしたんだよ。何か面白い事がありそうな予感が」
 「予感でございますか・・・」

 軽く頭を傾ける男に苦笑で答える。

 「予感と言っても、単に夢見がよかっただけなんだけどな。それに、オレの予感が当たったためしなんかねぇし」

 気にするなというように男を軽く叩きながら立ち上がる。

 「腹減ったな。飯にするぞ」
 「はい」

 少年に促されて二人は船内に向かう。
 扉に手をかけたところで、少年は振り返り、もう一度海の中の小島を見る。

 先程男にはああ言ったが、少年にはどこか確信めいたものがあった。
 あの小島に何かが待ち受けている――と。

 それが何であるかは分からないが、少なくとも陸と遮断された海の上の退屈な日々を変えてくれるだろうと思う。

「メリクリウス王国か・・・楽しみだな」

 ふっと笑って、船内に入る。





 少年の予感が現実のものとなるのはあと少し――











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