序
シンデレラはお城から自分の家へ戻りました。綺麗なドレスも全て消えてしまい、元の質素な服に戻ってしまいました。
その胸はまだドキドキと高鳴っています。
”まさか王子様があんな事を仰るなんて・・・”
シンデレラの脳裏に先程の王子の熱烈な告白が過ぎります。
思い出した途端にシンデレラの顔は燃え上がりました。
”やだ・・・どうしよう・・・”
シンデレラの心の中には今だ眠りの森の彼が住んでいます。ですが、王子の告白は彼女の心に少なからず波風を立てました。
しばらく顔を赤らめていたシンデレラでしたが、突然顔を曇らせました。
”王子様の告白は果たして本気なのだろうか”
彼には色々な噂がありました。どこぞの娘に手を出したとか隣国の姫に求婚されたとか、その全てが女性関係に纏わる事だったのです。
お付き合いした女性は数知れずですがその全てが長続きしなかった王子様なので、シンデレラが疑うのも仕方ありません。
”それに・・・身分差があるわ”
一国の王子と庶民の娘が結ばれるわけがないのです。例え好きあっても決して結婚する事なんて出来ません。
今は遊んでいる王子様もいつかは王様になってお妃様を娶らなければいけません。そのお相手はもう決まっているのでは、と皆は噂していました。
”やはりお戯れだったのかしら・・・”
もうこれ以上傷つきたくはありません。もう苦しい思いはしたくないのです。
ですからシンデレラは次の舞踏会には行きませんでした。もちろん王子様からは招待状がきています。
彼女は王子様の心を試してみようと思ったのです。
本当にシンデレラを愛しているのなら簡単には諦めないはずです。
実を言うと、王子様が諦めてくれたらいいと思ってのことでした。王子様と結ばれても幸せになれないのは分かっていたからです。
ですが、王子様は決して諦めませんでした。
シンデレラが舞踏会に来ないと知るとすぐに彼女の家に向かったり、毎日文を寄越したりしました。
初めは戸惑っていたシンデレラにも王子様の熱意は伝わり、段々と心を動かされていきました。
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