序
シンデレラは泣いておりました。それはもう声が枯れるほどに。
”王子様があんな方だったなんて・・・”
シンデレラは悲嘆に暮れます。なぜなら出会った王子様は自分だけの王子様ではなかったからです。
しくしくしくしく
シンデレラは泣き続けました。その涙は一向に止まる様子はありません。ここは王宮のはずれ、誰にも見られる事はありません。
ついに声を上げて泣こうとした時でした。近くの草むらがガサリと音を立てたのです。
野犬と言う二文字がシンデレラの頭の中に浮かびました。
どんどん音が大きくなり、草は激しく揺れます。
”誰か・・・!!”
怖くなって叫ぼうとした時でした。
”ねえ、あんた”
”え・・・?”
草むらから出て来たのは野犬などではなく、人間でした。しかも悪魔の王子様に劣らず美しい顔をした少年だったのです。
驚いて何も言えないシンデレラにその少年は不機嫌そうに言いました。
”さっきからあんたの泣き声のせいで眠れない。静かにしてくれないか”
随分な言い様でしたが、良く見れば高い身分のお方のようです。
”なぜこんな所で寝ているのですか?”
”ここが好きだからさ”
”あなた様は眠りの森の王子様なのですね”
相変わらず素っ気無い物言いでしたがシンデレラは気にしません。よく見ると、あれほど流れていた涙も驚く事に止まっています。
ドキドキドキドキ
どうしてでしょうか、シンデレラは胸の高鳴りを抑える事が出来ません。
不思議とシンデレラはこの少年に運命的なものを感じていました。
まさかこの方こそが自分だけの王子様なのかとさえ思っていました。
だからシンデレラは聞かずにおれなかったのです。
”あなた様は私だけの王子様なのですか?”
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