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 確かに明さんの言う通り、結婚と言っても今すぐ出来るわけじゃない。日本の法律では女性は16、男性は18から結婚が出来る。帝君が今16歳だから、最低後2年はかかる事になる。

 でも、高校を卒業してすぐに結婚するとも限らないよね。お互いまだ十代だし大学にだって行くだろうし。そうなると5年以上はかかるんだ・・・。

 5年。

 あっという間なんだろうけど、今のあたしには信じられないほど長い時間に感じられる。付き合って数ヶ月で破局のピンチがいくつ合った事か。それを考えると5年はあまりに長い。

 果たして5年後、あたし達はまだお互い好き合っていられるんだろうか。

 「少なくとも俺は大丈夫」

 思わず不安を口に出すと、帝君はあっさりとこう言った。

 あまりに簡単に言うから、拍子抜けすると共に怒りがこみ上げて来た。

 「簡単に言うけど、5年以上だよ!?何があるか分からないじゃない。帝君はもてるし、心変わりも十分ありえそう」
 「御影流架にフラフラしてる奴に言われたくない」
 「フラフラしてるって・・・!現在進行形使わないでよ。過去の話でしょ!?」

 あれだけ彼は友人で、もう何でもないんだよって言ってるのに。まだ気にしてたなんて・・・結構しつこいな。

 「しつこいって何だよ。あんだけフラフラしてりゃ嫌でも疑うって」
 「帝君こそ女遊び激しかったくせに!あたしだけとか言われても全然信用出来ない!」
 「はぁ!?」

 その後はまたお互いの不満をぶつけ合って、軽い悪口合戦になってしまった。
 あたし達には甘い雰囲気やシリアスな雰囲気って一生作れないんじゃないかって思っちゃう。

 だけど、言い合ってるおかげで不安な気持ちはいつの間にかどこかに吹き飛んでしまっていた。そうしたら何だか気が楽になって、言い争いをしている事が馬鹿みたいに思えてくる。

 帝君も同じ気持ちだったのか、ふと顔を見合わせると、どちらからともなく笑った。

 あたし達はこれでいいんだって思った。不満でも何でも素直に口に出さないと伝わらない。一人で思いつめてても何も始まらないんだし。

 「・・・あたし達ちゃんと結婚出来るかな?」

 先程とは違って、今度は凄く明るく言う事が出来た。

 「茉莉みたいなの貰ってくれるやつなんて他にいないから大丈夫だろ」
 「何それ!」
 「茉莉を一番想ってるのは俺だし、一番幸せに出来るのも俺なんだから」

 また喧嘩をする気かと声を荒げた瞬間、やけに真剣な帝君の声が耳を打った。

 「何年経っても何があっても、俺以上の男なんて現れるわけないんだから大丈夫だ。もしお前がまたフラフラしても、絶対こっち向かせてみせるから」

 言いながらあたしの左手を取って、薬指にキスを落とす。

 「絶対逃がさないから、覚悟しろよ」

 刹那、震えるほどの歓喜が込み上げて来て、不安が確信へと変化していく。

 そうだ。二人で証明しないと。これはただの遊びなんかじゃないって。学生の幼い恋なんかじゃないって。明さんに、ママに、世間に証明するための手段はただ一つ。

 負けじとあたしも彼の手を取って指をなぞる。

 「帝君ほどの優良物件逃すわけないじゃない。そっちこそ覚悟してね?」

 どんなに逃げ出そうとしても絶対逃がしてなんてあげないんだから。プロポーズしたからには責任とってもらうんだから。

 この先色んな試練が訪れるだろう。別れようと思う時も来るかもしれない。だけど、きっと大丈夫。
 何年先になるか分からないけど、絶対に成長した帝君の隣で純白のウェディングドレスを着て見せるから。

 「これからもよろしくね?婚約者殿」











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