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 反射的に体が強張って帝君から離れようともがいたけれど、彼はあたしを放そうとはせず、ますます拘束を強めた。
 腕の中で抗いながらママの後ろに明さんを見て、あたしは思わず叫んでいた。

 「違うの!!」

 とにかく誤魔化さないといけない。その事しか考えていなかった。あんな会見があったばかりで言い訳をしても仕方ないんだけど、その時はもうとにかく焦っていた。

 「えーと、帝君はちょっと気分が悪くて・・・」
 「俺は茉莉が好きだ」
 「帝君!?」

 何を言うんだ、こいつは。両親の前での突然の好き発言に焦りを通り越してパニックを起こしそうになる。
 そんなあたしを黙らせるように帝君は自身の胸にあたしの顔を押し付けた。あまりの息苦しさに窒息しそうになる。

 「さっき会見で言った通り、俺は茉莉が好きで、将来結婚したいと思ってる」
 「・・・本気かい?」

 初めて聞く明さんの冷たい声に腕の中でゴクリと息を呑む。あんまり会った事は無いけれど、あたしにはいつも優しい、穏やかな態度で接してくれた。

 今は帝君に顔を押し付けられているせいで明さんがどんな表情をしているか分からないけれど、きっと恐ろしいんだろうな・・・帝君の凄んだ時のように。

 「賭けには勝ったはずだ。文句は言わせない!」

 駄々っ子のように叫んだ帝君の腕が僅かに震えている事をあたしは肌で感じ取っていた。
 明さんにこんな態度をとる帝君をあたしは知らない。実の父親の前でも常に仮面をつけ、敬語で話していた帝君。親子なのにどうしてだろうと首を傾げていたけれど・・・。

 それにもう一つ気になる事がある――賭けについてだ。何のために、何を賭けて、何をしていたんだろう。すごく気になったけれど、この状況でそれを聞くほど馬鹿じゃない。

 だけど、この場に一人だけいたのだ・・・空気の読めない人が。

 「賭けって何の事なのぉ」

 それが誰なのかなんて、見なくても特徴的な声と話し方、そして空気の読めない駄目っぷりで分かる、ママだ。

 ママは実の娘と義理の息子の抱擁を前にして特に動揺する様子も無く、可愛らしく首を傾げて見せた。

 「もしかして前に言っていたあの事かしら〜?」
 「そうですよ。まさか本当に賭けに勝つなんて、我が息子ながら驚きましたよ」

 ボケボケのママを優しく見守る明さんはさっきまでとは別人のようだった。漸く落ち着いてきた帝君の腕から抜け出して、改めて二人と対峙する。

 もう言い訳は通用しない。二人に認めてもらう事しか出来ない。だけど、きっと二人はあたし達がこんな関係になる事を望んでいないだろう。義理とは言え姉弟なんだから。
 初めはママも冗談で帝君を勧めてきたけど、いつだったか電話ではっきりと言われた。あたしと彼は義姉弟でそれを自覚しろって・・・あれはきっと間違いなんて起こすなと言う戒めだったに違いない。

 だけど、もう遅い。あたしは帝君が好きだ。義弟としてではなく、一人の男の子として。さっきは咄嗟に誤魔化そうとしたけれど、ちゃんと伝えないといけないよね。そうじゃないと帝君にも二人にも失礼だ。

 「・・・ママ、明さん今まで黙っていてごめんなさい。実はあたし達付き合ってるの」

 スッと細くなるママの目を何とか逸らさずに早口に言い切った。これでもう完全に後戻りは出来ない。
 固唾を呑んで見つめる先にいるママはそっと瞬きをすると、

 「そんな事とっくに知っているわよぉ?」

 可愛らしく小首を傾げながらウインクをして見せた。

 「・・・・・・・・え?」

 ママの言葉に反応を返すまで、たっぷり5秒はかかってしまった。だって、何か信じられない言葉が聞こえたから。

 「一体どう言う・・・」

 隣にいる帝君も呆然と言った様子で目を見開いていた。どうやら彼にとっても予想外だったらしい。

 二人で二の句が告げずに目を瞬かせているとママは訳知り顔で明さんに目配せした。

 「ママ達を甘く見ちゃ駄目よぉ。最初から何もかもお・み・と・お・し、なんだからぁ」
 「海外にいる間も逐一報告させていましたからね」

 言いながら微笑みあう二人の笑顔のなんて黒い事・・・。最初から知っていたなら当然湧き上がってくる疑問がある。

 「知ってたなら・・・知ってたなら何で今まで放っておいたの?しかも他の人との婚約を持ち出したり・・・一体何考えてるのよ」

 泣きそうだった。混乱とショックと恥ずかしさで今にも叫んでしまいそうになる衝動を抑えるのに必死だった。

 そんなあたしを見て、ママは困ったように微笑むと、

 「話さなくちゃいけない事がお互いにたくさんあるみたいねぇ」

 明さんにそっと言った。

 「そうですね。もっと早くそうすべきだったんですけど・・・随分と時間がかかってしまいました」

 自嘲気味に口の端を持ち上げると、明さんは穏やかな父親の眼差しを帝君に向けた。

 「帝・・・これまできちんとお前と向き合って来なかったね。いい機会だ、お互い包み隠さず話し合おう」

 瞬間、帝君は大きく震え、助けを求める様にあたしの手を強く握り込んだ。  











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