新年パーティから、ママと明さんは毎日忙しそうにどこかに出かけている。色々なパーティとか会議に出席しているんだと思うけど、ほとんど家に帰って来ないからろくに話も出来ない。

 話したところで何を言ったらいいのか分からないけれど。だって二人にとって流架君はあたしの彼氏になってるんだから。

 それに、話をするのが怖いと言う思いもある。もし、婚約の話でもされたらどうすればいいのか分からないから。


 そんな感じで、パーティーから数日間はどこかに行く気分にもなれずに自室にずっとこもっていた。
 だけど、今日は屋敷を出なければならない。だって、今日から学校が始まるんだから。でも・・・

 「・・・行きたくない」

 久しぶりに袖を通す純白の制服を鏡に写しながら人知れず溜息を吐く。きっとクラスメイトもニュースを見たんだろうな。あれから流架君とは会ってないけれど、学園に行けば顔を合わせる機会もあるだろう。
 本当ならすぐにでも電話して話し合わなければならなかったんだろうけど、どうしてもそんな気になれなくて携帯電話を仕舞いこんでいた。

 「・・・帝君・・・」

 口中で呟くと胸がズキリと痛んだ。あたしが落ち込んでいる間、彼とはろくに話をしていない。帝君も毎日忙しそうにどこかに出かけているから、桐堂家の御曹司としての役割を果たしているのかもしれない。
 彼に比べてあたしときたら、何もしていない。たまにパーティに出ても彼の役に立てないし、むしろお荷物だよね。

 今度の婚約騒動も迷惑かけてると思う。帝君があたしの彼氏なんだって誰にでも公言出来ればどれほどいいか・・・でも、それは出来ない。
 改めて思い知らされる。あたしと帝君の恋に未来はあるのかな。相手が流架君ならあんなにも簡単に彼氏だと言えたのに帝君だと――

 そこまで考えてハッとする。あたしは今、何を思ってた?

 「・・しっかりしなきゃ」

 楽な方へと逃げちゃ駄目だ。ちゃんと立ち向かわないと。

 気合を入れて、自分自身を奮い立たせようと、頬を一度両手でパチリとした瞬間、ドアがノックされた。

 「お嬢様?お支度は出来ましたか?」
 「あ、はい。今行きます」

 メイドさんの声に促されて慌てて鞄を手にとると部屋を出る。

 「お急ぎ下さいませ。遅れておりますので」

 時計を見ながら少し焦ったように言うメイドさんに、勇気を振り絞って聞く事にした。

 「あ、あの・・・帝君は?」
 「帝様でしたら既に学園へ向かわれましたが」
 「そ、うですよね」
 「お嬢様お早く。お車は既に準備出来ておりますので」

 言葉少なに言うと、急かされて小走りに車へと向かう。
 出来れば帝君と一緒に登校したかったけど、寝坊して遅刻ギリギリのあたしがいけないよね・・・明日からは早く起きよう。話し合わないといけない事もたくさんあるんだし。

 そんな事を考えながら車に乗り込むとあたしは学園へと向かった。









 「茉莉様」

 ぼんやりと窓から外の景色を見るともなしに見ていたら、車が止まり、運転手の佐々木さんが戸惑いがちに声を掛けてきた。
 一瞬もう着いたのかと思ったけど、そこはまだ学園の駐車場ではなかった。

 「どうしました?」
 「門の前にテレビ局が・・・」
 「え?」

 窓を開けて顔を出すと、門の前に何台かのカメラと人が群がっていた。

 「もしかしてあれって・・・」
 「おそらく・・・どうしましょう。このまま門を抜けるのは・・」
 「ここで降ろして下さい。裏門に回ります」

 そんな事をしていれば確実に遅刻だけど、仕方ない。これ以上テレビであたしの映像が流れる事は好ましくない。

 「では帰りもこの辺りに控えております」
 「はい。よろしくお願いします」

 自ら降りるとドアをそっと閉める。そして報道陣に気付かれないように木々の後ろにに隠れながら足早に裏門へと向かった。











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