序
王子様が悲嘆に暮れている頃、シンデレラもまた悲しみのあまり涙していました。
”シンデレラの婚約者が決まったよ”
有無を言わさぬ父の言葉に逆らえるはずもありません。この時代は父の言う事は絶対なのです。
婚約者は父の古くからの友人の息子である下級貴族でした。シンデレラとは身分も年齢も釣り合いが取れています。
しかし、シンデレラには既に心に決めた方がいました――王子様です。
ですが父に王子様と付き合っているなんて言えません。身分違いで反対される事が分かっていたからです。
”きっと王子様が何とかしてくださるわ”
シンデレラは信じていました。何があってもシンデレラと王子様の想いは本物だと。いつかは結ばれる事が出来ると。
そんな時でした、街中にある張り紙が張られたのは。
シンデレラは買い物に来ている途中でそれを見てしまいました。そこには信じられない事が書いてありました。
王子、隣国の姫と結婚。
”そんな・・・嘘、だわ”
王子様は確かにシンデレラを好きだと言ってくれました。彼女には王子様の結婚など信じられるわけもありません。
シンデレラはすぐに王子様に真実を聞こうと城に向かいましたが、下級貴族である彼女が王子様に会えるはずもありません。
舞踏会はもう終わってしまったのです。
舞踏会が無ければシンデレラと王子様は会う事も出来ません。それほど二人の間には壁があったのです。
”相手は王子様ですもの、当然だわ”
ようやくシンデレラは気付きました。この恋には初めから未来など無い事を。誰からも祝福されないものだと言う事を。
”王子様の事は忘れた方がいいのかもしれない”
彼に会えない日々と、王子様と隣国の姫との結婚を喜ぶ友人達を見ていると段々とシンデレラに諦めの心が生まれてきました。
涙も枯れ果てた頃、ついにシンデレラは決心しました。
”王子様の事は忘れて、婚約者と結婚するわ”
夢から覚めたシンデレラに残ったものは悲しすぎる現実だけでした。
BACK NOVELS TOP NEXT