序

　昔、ママが読んでくれた沢山の絵本の中であたしが一番好きだった話がある


　継母や姉達に虐められながらも懸命に頑張って頑張って、そして最後には王子様と結ばれる、とっても有名な物語







　シンデレラ




　女の子だったら誰だってシンデレラみたいになりたいって思ったはず


　当然あたしだって思ったわ




　いつか王子様が、って




　それを言ったらママはいつもみたいに笑ってこう言ってくれた


　いつかきっと茉莉だけの王子様が現れるよ


　あの頃はその言葉が嬉しくて嬉しくてたまらなかった


　あたしの王子様はいつ現れるのかって毎日わくわくしてた





　あれから何年もたって、もうそんな事は信じてない


　・・・信じてないんだけど、今でもどこかで思ってる自分がいる


　お金持ちでなくてもいい

　王子様でなくてもいい

　カッコよくなくてもいい


　 　あたしだけを思ってくれて、あたしだけを愛してくれる






　そんなあたしだけの王子様がいつかきっと―――











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